ドライブイン蒲生

ドライブイン蒲生

誰もが羨ましがる未来が見えないが今がとても輝いている

不良オヤジにやさぐれた子ども。
食事が不味く裏寂れたドライブイン。
端っから将来が不安でしか無い状況。
いい大学に行っていい会社へ就職するという普通の人が夢見る将来のないこの環境を楽しんでいるような姉弟が俺には自由で羨ましく感じてしまう。
若気の至りの行動も将来で振り返るからこそいい思い出となる。
逆に若いころに勉強ばかりで馬鹿なことをしなかったヤツってそんな楽しい思い出は少ないと思う。
僕の家庭は客観的に見ても裕福ではなく所謂ところの『中の下』ってヤツ。
成績だって特に良いわけでなく、またまた『中の下』だったな。
英語が大嫌いでテストで一度100点満点の14点を取ったくらいだ。
そのかわり生物は好きで勉強も楽しかった。
テストも100点満点で92点を取ったのが僕の唯一のささやかな自慢だ。
みんなと力を合わせて何かをするってことがあまり好きではなく、グループの輪の中にいても知らず知らずに一歩引いた状態で接している。
そう言えば中学2年の時にこんなことがあったな。
林間学校でカッター漕ぎをクラスでしたんだ。
カッターってのはボートの大きやつでWikipediaによると

漕ぎ手はベンチに2列に並んで座りそれぞれ1本のオールを漕ぐ。
同じく軍艦に搭載される「長艇」に比べて幅広でずんぐりした形をしている。
日本語では「端艇(または短艇)」という。

ってものなんだけど、クラス全体が勝負好きで何でも勝負にしたがる。
ひねくれ者の俺はみんなのテンションが上がれば上がるほど一人下がっていく。
わざわざ競争なんでしなくてのんびりとオールで漕ぐことや周りのキレイな風景を愉しめばいいじゃないか。
だがしかし、うちの担任の一言でクラス対抗レースが決定してしまう。
スタートしてからは一応俺なりではあるが一生懸命に漕いだつもりだ。
だが、もとよりこんな勝負をヤリたくない俺は途中でバカバカしくなり楽をしようを力を入れなくした。
スラムダンクの名言である『左手は添えるだけ』をまさに実践した。
(まぁ正確にはオールを持つ手を添えるだけなんだけどな)
でもあからさまに力を入れてないのがバレたら面倒なんで真剣な顔を演じることは忘れなかった。
思いのほか上手くいってシメシメとこみ上げる笑いを噛み殺すのに苦労した。
が、3回ほど漕ぐとオールのリズムが他の人とズレてくる。
それもそのはず、男女2人1組のペアで一つのオールを漕ぐのだが、俺の相手はガリガリなくらい痩せていて学年で一番肌が白く、部活は茶道部(だったはず…)
運動なんて不得意中の不得意。
そんな彼女が急に重くなったオールを制御できるわけ無い。
なんなら3回も漕いだことを褒めてやりたい。
体力の限界だったんだろうね、いきなりオールが動かなくなったんだよ。
後ろの席のオールがガツンと当たる。
と、同時に湖にオールが吸い込まれていく。
隣を見ると握力が無くなったのか両手をグーパーグーパーしてる。
あの時ほど焦ったことは無かったね。
レースに負けるだけでなく、棄権し完走できないって事にね。
年に数回の本気モードに一瞬にしてなり、思い切り力をオールに入れたんだが時すでに遅し、あれよあれよと湖に飲み込まれていき、俺らペアは握るものが無くなった。
水面に浮かぶオールを取るため旋回号令をかける担任。
何が起こったのかわからない多くのクラスメイト。
彼女に小さく一言「ゴメン」
岸に着くまでの一切の言葉がないあの重苦しい雰囲気。
めちゃくちゃキツかったな。

ストーリー
閑古鳥が鳴く『ドライブイン蒲生』に生まれ育った姉サキと弟トシは、ヤクザ崩れの父のせいで、幼いころからバカの一家と近所から疎まれてきた。
そんな惨めな境遇に失望したサキはヤンキーとなった揚げ句、子供を身ごもり姿を消してしまう。
それから数年後、夫に暴力を振るわれたサキは嫌っていた実家に出戻り…

原作:伊藤たかみ
監督:たむらまさき
脚本:大石三知子
音楽:ヤマジカズヒデ

染谷将太 / 黒川芽以 / 永瀬正敏
猫田直 平澤宏々路 吉岡睦雄 小林ユウキチ 黒田大輔 鈴木晋介

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